なぜハエは手をスリスリするのか?
こんな問い合わせをいただきました。「味覚器官の密集する前脚を拭いている」とどっかに書いてあったのを見た記憶があるのですが、本当にそうなのかどうか?味覚器官は前脚だけでなく中脚や後脚にもあるし、味覚器のある足先だけでなく、もっとあちこちスリスリしているようにも見えます。
昨日に引き続きハエの話題です。手(前肢)を擦りあわせる動作は一茶の俳句に詠まれるほど有名なのですが、この動作の意味はなんだろうという話です。
Googleで検索してみると、その疑問の答として
これは、ハエの脚の先端に味覚を感じる感覚器官があり、そこのゴミを掃除しているからなのです。
三共消毒株式会社よりという「味覚を鋭敏にするための清掃論」のが一般的なようです。
しかし、最初に紹介したサイトでは「ハエ業界」の方々がその理由について、味覚を鋭敏に保つだけではないのではないかという視点からおもしろい議論を展開しています。まず一般的に指摘される清掃論に関しては体のすみずみを擦っているように見えることから清掃論を疑っています。それ以外にも理由があるのではないかということですね。これに対しての意見として清掃論を拡張した「体中にあるセンサーを鋭敏にするための清掃論」が提唱されています。
この説ではハエの体に蛍光ダストを噴霧して粉だらけにして観察すると体中をこすって(グルーミングして)最終的に手の届きにくい腰回り以外のダストがきれいに取り除かれるという実験結果から体中を擦る習性がハエにはあること、そして体中を肢で擦り後肢を前肢で擦るため、最終的に前肢にゴミがたまってそれを前肢同士を擦り合わせてきれいにする。だから前肢同士を擦る動作が目立つという説です。その証拠になるかどうかは微妙ですが、ハエのグルーミングパターンを詳しく見てみると前肢と後肢、前肢と中肢など様々なパターンで擦りあわせていることが観察できるそうです。
しかし、なぜグルーミングをするのかという根本的な問題については体中にある味覚を含んだ様々な感覚器を清掃しているからだという推測をするにとどまっています。
この推論を裏付けるデータとして、体についた水滴を除去しようとするコオロギの動きが示されます。これは体表面の剛毛に加わった機械刺激を起点とした反射的な行動だと考えられているようです。この反射がハエにもあって体中の毛が起点になっているという説です。しかし、ハエは四六時中体中を擦っています。反射説ではうまく説明できません。これを説明しようとするのが「自己刺激説」です。体中の毛を刺激することに快感を覚えているのではないかという説で、やめられないとまらないというわけです。
そのほかにもフェロモンを擦りつけているという「化粧説」なども提言されています。また、生物の行動すべてに意味を見いだす必要はないのではないかということも言われています。これはとても重要な視点だと思います。そんなことを言ってしまってはこの記事の意味も半減してしまいそうですが。
結局、この議論では結論は出ていませんが、示唆にあふれた非常におもしろい議論になっていると思います。今度ハエを見つけたらハエが何を思って手を擦りあわせているのか想像しながら眺めてみるのもおもしろいかもしれませんよ。